問題に正解していても、「どうしてその式になったの?」と聞くと説明できない。その状態は、本当に理解したとは限りません。
数字を少し変えると解けない、ほぼ同じ類題で手が止まる、解き方を尋ねると急に言葉が曖昧になる。こうした反応から見えてくるのが「分かったつもり」です。
個別指導の強みは、先生がすぐ隣にいることだけではありません。受け答えを通して、知識が「聞いたことがある」段階なのか、「自分で説明できる」段階なのかを確かめられることにあります。
この記事で分かること
- 「分かったつもり」によく見られる反応
- 個別指導で本当の理解度を確認する方法
- 家庭で問い詰めずに理解を確かめる声かけ
正解と理解は同じではない
答えが合っているかだけでなく、考え方を再現し、説明できるかを見る必要があります。
たまたま覚えていた式を当てはめれば、問題に正解できることがあります。しかし、「なぜ掛け算なのか」「この数字は何を表しているのか」が曖昧なら、条件が少し変わった応用問題では使えません。
- 式の意味を説明できない
- 数字を変えると同じ考え方を使えない
- ほぼ同じ類題で解き方が分からなくなる
- 解説を読んだ直後だけ答えられる
- 頷いていたのに、話を振ると答えられない
一つ当てはまったからといって、怠けていると決めつける必要はありません。どこまで理解できているかを知るための手掛かりとして使います。
「教えて」と頼むと、本当の理解度が見えやすい
理解確認では、「テストする」のではなく「教えてもらう」形にすると答えやすくなります。
Boost Academyでは、「これ、どうやって解いたの?教えて」「どうしてこうなるの?」と質問します。答えだけを尋ねるのではなく、途中の考え方を言葉にしてもらうためです。
自分の言葉で説明すると、本人も曖昧な部分に気づきます。学習者が自分で説明する過程を扱ったChiらの自己説明研究でも、説明をつくることと理解状態を正確に捉えることが、学習に関わる重要な要素として示されています。
また、人は物事を実際以上に深く理解していると思い込みやすいことが、RozenblitとKeilの研究で「説明の深さの錯覚」として論じられています。説明を求められて初めて、理解の穴が見えることは珍しくありません。
入塾直後は、小さな階段を一段ずつ用意する
「分かったつもり」の回答が出ても、責めるより一段前へ戻って説明します。
入塾したばかりの子であれば、まだ「分からない」と伝えることに慣れていない場合があります。大人の期待に応えたい、早く終わらせたい、賢く見られたい。理由は一つではありません。
そこで、いきなり難しい説明を求めるのではなく、もっと細かな質問へ分けます。「この数字はどこから出た?」「最初に何を求めた?」「図にするとどこ?」と、小さな階段を一段ずつ上がれるようにします。
答えを丸写ししていた場合は、今後の学習のためにも注意します。ただし、感情的に責め続けても理解は深まりません。行動の問題と理解不足を分け、必要な指導へ戻すことが重要です。
勉強が得意な子ほど「説明できるか」を基準にする
難関校を目指す子には、「分かったつもり」の危険を本人へはっきり伝えることもあります。
偏差値が高く、標準問題をすぐ解ける子でも、本質的な理解が抜けることはあります。本人が気づきにくいからこそ、別の切り口から質問し、条件を変えた問題でも考え方を使えるかを確認します。
一つの基準は、「妹や弟に説明できるか」です。相手がまだ知らない前提で、言葉や図を選び直せるなら、知識はかなり整理されています。説明できなければ恥ずかしいのではなく、次に学ぶ場所が見つかったということです。
家庭では、ムキにならずに「教えて」と聞く
保護者が正解を迫るより、子どもの説明を聞く側に回る方が理解の状態を確認しやすくなります。
「さっき分かったと言ったでしょう」「なんでできないの」と責められると、子どもはさらに分かったふりをしやすくなります。小学生や中学生の行動には、早く終わりたいという素朴な気持ちが影響していることもあります。
家庭では、「お母さんにも分かるように教えて」「図にしてくれる?」という聞き方から始めてください。説明できないときは、その場で問い詰め続けず、「ここは先生に聞こう」と次の行動へつなげます。
よくある質問
問題が解けていれば、説明できなくてもよいのでは?
基本問題だけなら正解できることもあります。しかし、理由が曖昧なままだと、数値や条件が変わった問題で使えない可能性があります。すべてを長く説明する必要はありませんが、重要な考え方は言葉にできる状態を目指します。
説明が苦手なだけの場合はどうしますか?
言葉だけで判断せず、図、式、具体例も使います。正しい図を描ける、別の数字でも解けるなど、複数の方法で理解を確認します。
分からないと言えない子にはどう接しますか?
分からないことを責めず、質問できたことを評価します。「分からない場所が分かった」こと自体を前進として扱い、小さな問題から成功体験をつくります。
